今回は『
「おだやかに暮らす」とありながら、「1億6千万円の失敗」という穏やかでない言葉がタイトルに併存しているのが、まずは印象的ですね。
内容的には、FXの裁量トレードで多額の損失を出したものの、そこで諦めずに、FXの師匠の言葉に励まされつつ、徹底的な検証を経て人に教えるまでになったトレーダーの物語(プロローグ)と、じゃあどうやって自分が負けトレーダーから這い上がって利益を出せるまでになったかその実践的方法(第1章以降)から構成されています。
正直FXの手法にはあまり目新しいと思うものはなく、使っているインジケーターの設定に興味をひかれたぐらいなんですが、オリジナルのツールを使ったほったらかしの半裁量トレードのスタイルと、FXを始めたころに多額の損失を出すまでのずるずると沼にはまっていくまでの描写には共感するところが大でした(笑)。
何でも著者は本業の建設業を営む傍ら41歳で先物投資を始めたのを皮切りに、事業資金やカードローンをつぎ込みながらFXの「ギャンブルトレード」にのめり込み、最終的には1億6千万円の損失を出して自己破産までやってしまったとのこと。
かつてFXの裁量トレードで大損を出した私もさすがにここまでの損失は出してませんが、仕事が手につかなくなったり、負けを取り戻そうとして資金をつぎ込んだりする様は、読んでて自分自身の昔のトレードの失敗を追体験しているようでもありました(苦笑)。
著者のこの失敗談は、投資履歴の年表や1億6千万円の投資先一覧、実家に帰ってしまった奥さんの置手紙wまで公開されて包み隠さず書かれてありますので、投資の失敗談から何かを得たいという方には興味深いストーリーかもしれません。
自己破産までいった経験を経て、普通ならこれでFXとおさらばしようとなると思うんですが、著者が凄いのはここから。
とあるFXセミナーに参加し、その講師を務めた方(FXの「師匠」)からの一言で奮起、その後徹底的な検証と勝つためのトレードの追求を経て、今度は600名超えるトレーダーのサポートをされるまでになられています。
最初にFXの手法としては目新しいものはないと書きましたが、そこはやはり20年以上の経験をお持ちのトレーダーですので、再現性あって、ロットを大きくできて、回数が多いロジックの構築が必要という部分や、チャートに入れるインジの設定なんかにも学びはありました。
著者がどのようにして負けトレーダーから勝ちトレーダーになったのか、第1章~第7章まで「負けているとき」「勝てるようになったきっかけ」という部分を自分の経験を踏まえて項目ごとに具体的に書かれてますので、特に今現在FXで負けているという方には何をどう軌道修正していったらいいかという点で参考になる部分も多いと思います。
著者の提示するツールを使った半裁量手法で果たしてゆったりと楽しみながら「90歳になっても稼ぎ続けることができる」か賛否は分かれるかもしれませんが、そのコンセプト自体には賛成ですし、FXで失敗した方、勝ててないという方は、その失敗談も含めて一読の価値のある本かと思います。